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製造業のDXとは?課題と進め方を事例とともに解説

この記事では、製造業におけるDXの必要性、進め方などを解説しています。またDXを進めていく際の参考となるよう、3社の成功事例を掲載しました。

製造業のDXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)について

まず、DXについて簡単に説明すると、「デジタル技術を活用しビジネスを含めた社会全体を変革していくこと」と言えます。
2018年に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」の中で、DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と示しています。

製造業におけるDXは、ものづくりの現場でこれまでの経験やノウハウを個人が積み上げていくだけでなく、デジタル化し、他者との共有を可能にしていくことが求められます。それを、作業工程の効率化、生産性向上、高品質化に取り入れ、ユーザーニーズに合致したビジネスモデルに改革していくことが重要になります。

製造業DXの必要性

現在コロナ禍の影響によって、製造業は他業種と同様に不安定な状況に置かれています。
経済産業省も「ものづくり白書2021」において

「新型コロナウイルス感染症の感染拡大以外にも、多くの外的要因が我が国製造業の事業判断に影響を及ぼすものと考えられており、かつ、これらは事前に発生や変化を想定することが難しい」

と述べています。社会変化、ユーザーニーズに素早く柔軟に対応することが求められているのです。

製造業DXの課題

製造業がDXを推進していくにあたって、課題となっていることは何でしょうか。
経済産業省が2020年6月に発表したレポート『製造業を巡る動向と今後の課題』では、製造業のDX化における課題として主に以下の3点を示しています。

1.人手不足と、属人的な実態により抜本的改善が進まない

日本では、少子高齢化による労働人口減少が深刻化しています。製造業にとっても大きな課題となっています。

日本は従来「現場が強い」といわれてきました。現場で働く個人の能力、スキルの高さが評価されていたのです。しかし、それはスキル等が個人内で蓄積に留まり組織全体に波及していかない状況を生み出してしまいました。
マンパワーに依存する価値観は、テクノロジーによる生産性向上が進まない原因の一つとなっています。

2.製造工程のデータ化・見える化などのデータ活用の遅れ

2019年時点で、製造工程のデータ収集に取り組んでいる企業は約半数、設備や工程の稼働状況などについてデータ収集や見える化を行っている企業については2割程度となっています。
国内の製造業者においては、データの収集や利活用が未だ進んでいないということがわかります。

3.最適なIT投資ができていない

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が2022年3月に発表した「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査報告書」によると、製造業において、50.2%の企業がIT投資を行っていると回答しています。約半数は未だにIT投資が進んでいない状況です。

また、IT投資の目的について、平時の際の効率性や生産を重視する企業(いわゆる「オーディナリー・ケイパビリティ重視」の企業)では、「旧来型の基幹システムの更新や維持メンテナンス」が目的と回答した企業が最多となっています。
一方、不測の事態に対する柔軟性を重視する企業(いわゆる「ダイナミック・ケイパビリティ重視」の企業)の目的は、「業務効率化やコスト削減」が、一番多くなっているものの、「旧来型の基幹システムの更新や維持メンテナンス」と回答した企業も半数近くありました。

どちらの企業群も現行システムの維持管理に予算を掛ける割合が多く、社会情勢やユーザーニーズの変化に素早く対応できる基盤づくりまで手が回っていないことが見て取れます。
これが製造業のDXを遅らせている課題の1つといえるでしょう。

参照 経済産業省「製造業を巡る動向と今後の課題」 https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/008_02_00.pdf

製造業DXの進め方

DX化を成功に導くために必要なことは、一気にゴールを目指すのではなく、ステップバイステップで進めていくことです。

ビジネスシステム改善の結果、生産した商品に新たな付加価値を持った製品を提供することが、製造業DX推進の目的です。しかし、付加価値創出や新システム構築を行うことが目的になってしまうと、目に見える効果を出せないケースも起こり得ます。
なぜなら、製造現場で活用するために収集・分析したデータと現状が乖離してしまうことがあるからです。詳細なデータ収集、現場と密なコミュニケーションがに重要になります。

以下の4つのステップを踏みながら、DXを進めていきましょう。

1.現場理解と実現イメージの共有

製造業でDXを進める際に取り組むべき第一のステップは、実現したいイメージを社内全体で共有することです。
イメージを共有する際は、現場で抱えている課題は何か、ということを明確にするのが重要です。具体的な課題の解決方法を検討することで、DX推進を行って行く際の道筋が見えてきます。

また、DX推進は全社が統一したビジョンの下で行っていくことが大切です。各部門がそれぞれに取り組んでしまうと、効率が悪くなる可能性があります。経営陣を中心として、各部門意見を取り交わしながら、取り組むべきことを明らかにしていく必要があります。

2.人材の確保とデータ収集

DXで実現したいイメージを明確化できたら、目的達成に必要な人材確保、データの収集と分析を行っていきます。市場のニーズを念頭に置き、商品生産を行います。品質の高さだけでなく、「ユーザーが真にもとめているものは、どのような製品なのか」を把握しているすることが大切です。

3.業務の効率化

データ収集と取りまとめができたら、次に業務の効率化を進めていきます。収集したデータを分析し、非効率的な業務については新しいデジタル技術の導入するなどして、業務改善を行っていきます。

業務効率化についても、段階を踏んで進めていきましょう。一気に進めてしまうことで、現場が混乱し却って効率が落ちてしまうことが考えられます。また、失敗した場合のダメージも大きくなってしまいます。

各部門でDX化を取り組み始めたら、その都度効果を検証することも大切です。取り組むたびに実行結果を検証し、成果が出ていることを確認した上で次の効率化課題に移ることで、スムーズにDX化を進めていくことができるのです。

4.ユーザーニーズの把握と製品価値の創出

製造業では製品販売に留まることなく、ユーザーニーズの変化に合致しているビジネスモデルの改善を継続していく必要があります。そのためには、常に顧客満足度や更なる希望を確認しておかなくてはなりません。

価値変化に対応していくためにリアルデータを活用し、価値創出のシステム構築が求められます。データの収集や分析、市場のシミュレーション等にはIoTやAIといったデジタル技術の導入が必要となってくるでしょう。

製造業におけるDX事例

既にDX化に取り組み成果を出している企業を3社紹介します。

株式会社LIXIL

株式会社LIXILは、新たなユーザーニーズに対応すべくDXを経営の中心に据え、様々な変革に挑戦しています。同社が2021年9月にリリースした『DOACアプリ』は、IoT技術を利用して玄関ドアの自動開閉を可能にしました。

現在、公共交通機関や建築物など、社会のいたるところでバリアフリー化が進んでいます。
また、近年のコロナ禍により、タッチレスで動作完了することが求められています。
LIXILは、このような社会のニーズに合わせ、各メーカーの玄関ドアに後付けができ、誰でも簡単に利用できる新しいバリアフリー製品を開発したのです。

参照 https://www.lixil.co.jp/

株式会社クボタ

株式会社クボタは、建機・農機などの製品を中心にグローバルな事業を展開しています。同社が2020年12月にリリースした『Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)』は、3Dモデル・AR機能を活用した故障診断を可能にした先進的サービスです。

建機の修理対応は、多くが現地販売代理店のサービスエンジニアの手で行われています。担当者の経験やスキルに頼る部分が大きく、マニュアルだけではサポートが行き渡らないケースも発生していました。
建機の修理期間が長引けば、当然建機ユーザーの収益減少につながります。そのため、サービスエンジニアのスキルに関わらず迅速に対応できるような故障診断フローが必要とされていました。

このような課題解決のため、ダウンタイムによる建機の稼働率低下を目指すと同時に、故障診断のニーズが高かった米国での運用も見据えて開発が進められました。

操作性に優れ、3Dモデル・ARを活用してビジュアルで故障診断が可能な当システムは、故障診断の効率化をもたらしました。それに加えて、サービスエンジニアの教育や人員の確保といった面でも今後の貢献が期待されています。

参照 https://www.kubota.co.jp/

ダイキン工業株式会社

「空調」「化学」「フィルタ」を柱にグローバルに事業展開しているダイキン工業は、製造コスト削減と製品差別化による競争力強化、サプライチェ―ンとエンジニアリングチェーンの最適化を課題にしていました。

ダイキン工業が推進するDXのひとつが『工場IoTプラットフォーム』です。大阪府堺市の新工場(デジタル・ファクトリー)は、工場内の全設備がIoT技術により連携されています。この工場を情報収集の標準化推進を図るための情報基盤としました。

収集されたデータは

製造現場データの発掘→データの収集と統合→データの見える化と分析→顧客への価値提

のサイクルを回していくことで、生産状態の可視化・生産計画を最適化によりロスを低減。
デジタル化や工場の生産シミュレーションなどを通して、予知・予測が可能になりました。

参照 https://www.daikin.co.jp/

株式会社今野製作所

今野製作所は、板金加工、機械修理、油圧機器製造などを主要事業とする企業です。2016年には、ITやデジタルの活用に積極的に取り組み成果を上げた中小企業を認定する「攻めのIT経営中小企業百選2016」(経済産業省主催)に選ばれました。

株式会社今野製作所の「プロセス参照モデル」は、業務プロセスやエンジニアプロセスにおける連携体制などをフロー図化したものです。複雑化した業務プロセス全体がわかりやすく可視化されました。これにより、生産状況の把握が容易になり、製造過程での課題洗い出しにもつながります。

結果として、プロセスの最適化や必要なシステム導入が行いやすくなり、収益増加を実現しました。

参照 https://konno-s.co.jp/

 

まとめ

この記事では、製造業のDX推進について、現状と課題、進め方、成功事例の紹介をしてきました。

製造業のDXが求められる背景として、属人的的実体、データ化の遅れ、IT投資の問題などがありました。
これらを解決するために、DXを進めていくわけですが、一気に進めるのではなく、現場や市場の状況を見ながらステップバイステップで進めていくことが重要です。

消費者は、単なるものの所有だけでなく、それに付随して得られる体験(エクスペリエンス)を求めています。製造業のDXは業務効率化、生産性向上を実現することが目標ですが、同時に消費者に対して新たな商品価値を提供することも必要とされているのです。

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