DX 小売業DXを推進するポイントと成功事例 2022.12.08 2023.06.05 この記事では小売業界のDXについて、その現状と必要性、DX化推進のためのポイント、DXの取り組み事例などについて説明しています。なぜ、小売業でDX化が求められているのか、どのような成功事例があるのかを見ていきましょう。 小売業の現状とDXの必要性 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用しながらビジネスモデルを改善し、業務及び組織、企業風土を変革していくことにより、競走上の優位性を確立すること、をいいます。インターネット通販の台頭によって、小売業は厳しい状況に立たされています。家にいながら商品が手に入る利便性により、消費者は店舗へ足を運ぶ機会が減っています。昨今のコロナ禍は、そのような状況をさらに加速させました。また、インターネット通販の普及は決済方法の多様化をもたらしました。現金払いのみの店舗では利便性が良いとは言えず、消費者が店舗へ足を運ぶ機会が減った原因の一つでもあります。このような、社会情勢の変化に合わせてECの導入、キャッシュレス決済化などのデジタル化が必要になってきています。さらに、小売業においても他業種と同様に深刻な人材不足があります。小売業の常用労働者数に対する未充足求人数の割合である欠員率は、全産業に比べて高い数値となっています。原因として、長時間労働や労働生産性、労働装備率の低さ等が挙げられるでしょう。と言うのも、別の調査では受発注業務、検品、請求処理業務において、小売業の半数以上が未だアナログ対応である、との結果も出ているからです。従業員の労働時間短縮、生産性向上のために、デジタル技術を導入し業務効率化を行っていくことが求められています。厳しい状況にある小売業だからこそ、DX化を進めていくことで現状の問題を解決していくことが必要になっているのです。 小売業DX化で必要なポイント 小売業がDXを進めて新しいビジネスモデルの構築や付加価値を創出していくために、重要なポイントは次の2点です。 DXに対する理解を深める 小売業のDXは、業務のデジタル化をして終わりではありません。もちろん、デジタル化による業務の効率化を進めていくことは多大な利益をもたらしますが、それだけがDXの目的ではないのです。デジタル技術を活用して、常に業務改革を行っていける体制づくりこそがDXの真のゴールと言えます。そのような体制へと変革していくことで、新しいビジネスモデルの創出やより高いレベルでの業務効率化が可能になります。そのためには、経営トップから全ての従業員までDX化の目的を理解し全社一丸となって推進していくことが必要です。 DXを進めていく人材の育成 自社でDXを進めていける人材の育成も必要です。社内に必要なスキルを持った人材がいない場合、外部ベンダーやインテグレーターで補うことは可能です。しかし、全てをお任せ状態にしてしまうと自社にスキルやノウハウが蓄積できないばかりか、迅速で柔軟性を持った変革ができなくなってしまいます。DX推進のための人材とはデジタル技術に詳しいだけの人ではありません。自社のビジネスを充分理解し、内在している問題を把握し新たな可能性を見出していく能力も必要です。人材育成は一朝一夕にできるわけではありません。時間をかけて行っていく必要があります。 小売業DXの事例 とは言え、小売業界でも少しずつDX化が進んでいます。ここからは、小売業界のDX事例を紹介していきます。 Amazon GO 「Amazon GO」は、QRコードを表示し入店、商品を選び再度QRコードを表示し退店すると、Amazonで決済が完了する仕組みです。レジでの決済がないため、スピーディに買い物をすることができます。2018年シアトルに第1号店がオープンしました。店舗内には、複数のカメラとマイクが設置され、棚にはセンサー取り付けられています。これらの機器からの情報をAIが分析することで、誰がどの商品を手に取り、または棚に戻したのかなどが正確に把握できるようになっています。また、それらの動きををリアルタイムで専用アプリと連携させており、退店時にAmazonアカウントで決済できるシステムです。Amazon GOの効果は、レジレスによる効率化だけでなく、リアルタイムで顧客情報が入手できる点です。AIで分析された店内での購買者の動きを、商品開発、仕入れ、店内陳列といったマーケティングや店舗改良につなげていくことが可能になったのです。参照 https://www.amazon.jobs/jp/business_categories/amazongo TOUCH TO GO 日本ではまだAmazon GO導入店舗はありませんが、レジレスタイプの店舗としては「TOUCH TO GO」が挙げられます。2020年高輪ゲートウェイ駅構内にオープンしました。ウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗です。TOUCH TO GOでは、店舗内に設置されたカメラや棚に設置された重量センサーなどにより、入店した人や手にした商品がリアルタイムに認識されます。カメラやセンサーの情報はAIが分析します。決済は交通系ICカード、クレジットカードが使用できキャッシュレスで買い物が可能です。マーケティングデータ分析などの機能はありませんが、店舗内スタッフの少人数化によるコスト削減に貢献しています。参照 https://ttg.co.jp/ 株式会社トライアルカンパニー トライアルカンパニーは、スーパーセンターを中心に国内261店舗を展開している企業です。AIを活用し、様々なシステムを開発して自社のビジネスに役立てています。「eSMART」は、POSと会員IDを連携し、そのデータを解析するシステムです。「リテールマップ」は、WebGIS(デジタル化された地理情報)システムを使い売上や会員数、来店者数などを地図上で可視化して商圏分析をすることができます。「レジカート」は、ショッピングカートにタブレットとバーコードリーダーが取り付けられており、レジ待ちの時間を削減しています。タブレットには購買状況に合わせたクーポンや限定商品の案内などが表示され、買い物客に応じた情報を提供することが可能です。また、「MD-Link」は自社のPOSデータを商品メーカーと共有できるサービスで、既に200社以上のメーカーと契約するなど新しいビジネスモデルの開発も行っています。参照 https://www.trial-net.co.jp/ ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは、首都圏を中心にスーパーマーケットを展開しています。公式アプリによるキャッシュレス決済を導入し、顧客の利便性を向上させました。顧客は、自身のスマートフォンにインストール済みの公式アプリを使い、購入する商品のバーコードをスキャンします。また、アプリでは決済機能も付いています。レジに並ぶ必要を無くし、スムーズに買い物ができるようになりました。また、レジが不要になったことで、従業員の省人化と省力化が可能になっています。人材不足と作業時間の軽減にも貢献しているのです。参照 https://www.usmh.co.jp/ 株式会社ローソン 全国にコンビニエンスストアを展開するローソンは、AI技術を導入して商品調達から販売までの一連の流れを見直し、食品廃棄ロスを無くしていく取り組みを行っています。これまで販売期限が近づいた商品値引きについては、各店舗がそれぞれ独自に行っており、店舗の経験値に頼るところが大きいものでした。このような店舗間のバラつきをなくすため、AIを活用し、店舗ごとにその日の在庫状況に応じた値引き対象商品や数量、値引き額、値引き時間などの情報を店舗に提供するシステムを構築したのです。このことで、商品を無駄にすることなく売り切ることができるようになりました。また、店舗周辺の見込み客に値引き情報を配信、来店を促せるような取り組みも始めています。AIによる需要予測を立てるシステムは、的確な発注や値引き販売による販促だけでなく、物流や工場生産までを含めたサプライチェーン全体の最適化を図ることができ、食品廃棄ロス削減が期待されています。自社の利益だけでなく、食品廃棄ロスという社会的問題の解決への取り組みを行っている注目すべきDX化の例です。参照 https://www.lawson.co.jp/index.html まとめ ネット通販の普及と利用拡大、人材不足と小売業の現状は厳しいものになっています。EC導入やキャッシュレス決済を可能にするなどのデジタル化が早急に求められています。このような状況の中で企業存続のためには、DXは必須と言えるでしょう。ここで紹介した成功事例なども参考にしながら、御社のDXを推進してみてはいかがでしょうか。 Tweet Share Hatena Pin it DX 建設業DXのポイントを事例とともに解説 介護DXとは?その課題と事例について解説