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飲食店のDX化メリットと進め方を事例とともに解説

この記事では、飲食店がDXを推進するメリットとその背景、進め方や導入事例について解説しています。

DX化が求められる理由やDXによって得られるメリット、進め方とDX導入済みの企業の例を知ることで、飲食店のDX化のポイントが見えてくるでしょう。

DXを推進すべき理由

2020年からのコロナ禍の影響で、飲食店を取り巻く状況は大きく様変わりしています。感染拡大防止のために、人々は外食する機会を大幅に減らしています。同時にUber Eats等を使い家から出ることなく店舗の味を楽しめるようになりました。

このような状況の中で、今までと同様の経営スタイルでは店舗を存続していくことは難しくなってきています。飲食店も社会情勢の変化に即した変革が求められているのです。

何をどのように変えていくのか。その答えとしてDXが挙げられます。

DXとは何か

2018年に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」の中で、DXとは

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

と示しています。

つまり、デジタル技術を導入することにより、これまでの店舗経営の在り方を変革し顧客のニーズに沿った新しいビジネスモデルを創り出していくことだと言えます。

飲食店の現状と課題

では、飲食店の現状はどのようになっているのでしょうか。ここでは飲食店の現状とその課題について解説していきます。

「稼ぎ時」に頼れなくなっている

コロナ禍以降、飛沫感染が心配される店舗での外食から人々の足は遠ざかっています。特に大人数の宴会や飲み会が避けられるようになったことにより、歓送迎会や年末などの繁忙期の売上が激減しています。これまでのような繁忙期に頼った経営では立ち行かなくなってきました。

これからは、よりシビアな売上管理やコスト削減などの経営上の戦略を立てていく必要があるのです。

新たな価値提供の必要性

これまでの店舗経営では、立地が重要視されていました。立地条件が良ければさほど販促活動を盛んに行わずとも、そこそこの来店者数が見込めました。

しかしコロナ禍の影響もあり、デリバリーやテイクアウトが拡大している現在、人々は好きな場所、時間、料理を選ぶことができるような状況です。わざわざ店舗へ足を運ぶ必要性が薄れてきているのです。

このような状況下では、顧客に対して店舗へ行く必要性を感じてもらう必要があります。「その店に行くことでしか体験できない新しい価値」を提供することが求められているのです。

人材不足

コロナ禍で飲食店の休業、営業時間の短縮は、従業員にも大きな影響を与えました。収入の減少を案じて転職した人も数多くいました。こうした状況から、現在飲食業の人材不足が深刻になっています。

業務の効率化、自動化を行い、従業員の負担軽減や少人数で業務を回していける体制づくりが必要です。

業態の多様化

収益増加のために業態変更を進めている店舗が増加してきました。デリバリーやサブスクリプションサービスの導入、テイクアウトに特化する等の顧客ニーズに合わせた取り組みで売上増加を図っています。

コロナ禍の影響で人々の消費活動の在り方や求める価値が大きく変わっています。社会の変化に応じて、より柔軟にビジネススタイルを変革していくことが求められる時代になっているのです。

飲食店がDXに取り組むメリット

では、実際にDX化を進めていくとどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、DX化で得ることができるメリットのうち5点を紹介します。

1.業務効率化とコスト削減

毎日の業務をデジタル化することで、時間短縮や業務負担の軽減といった業務効率化が可能です。

例えば、在庫管理や発注作業を自動化すれば、その業務にかけていた時間や労力が不必要になります。また、ミスを起こすリスクも小さくなるでしょう。

業務時間と労働負担の軽減は、人件費削減などのコストカットにつながります。同時に、より高品質なサービス、経営戦略に専念する余裕を生み出します。

2.データ活用ができる

飲食店のDX化によって顧客情報のデータベース化ができるようになります。顧客の属性、来店日時や注文内容など必要な情報をデータベース化しておけば、集計、分析が容易になります。

結果、顧客に応じた個別サービスが提供できるなど、新たなマーケティング戦略を仕掛けていくことも期待できるでしょう。

3.コミュニケーションの円滑化

DX化メリットの3つ目は、コミュニケーションの円滑化です。ここでのコミュニケーションは、顧客とのコミュニケーションおよび従業員同士のコミュニケーションと2種類があります。

顧客とのコミュニケーション

SNSやブログのコメント欄などを使用すれば、店舗外でも顧客と双方向のコミュニケーションが可能です。予約システムやお問合せフォームなどは、顧客との交流ができる他にも顧客の利便性を向上する役目も果たします。

従業員同士のコミュニケーション

連絡や報告をデジタルツールやクラウド上で行うことで、従業員同士の情報共有が容易になり、業務に関する情報伝達ミスによるトラブル防止にもつながります。

飲食店のDX化手法

次に、飲食店がDXを進めていくための手法を3点紹介していきます。

1.オンライン予約システム

現在、オンライン予約システムの利用は珍しいことではなくなっています。
2021年に実施されたMMD研究所の調査では、スマホでのネット予約の経験がある人は約7割、予約したことのある施設ジャンル別1位は飲食店という結果が出ています。

顧客ニーズに応えるために、オンライン予約システム導入は欠かせないものとなっているのです。

2.拡散性の高いSNSの活用

SNSを使い、急な営業時間の変更や旬のメニュー紹介などをリアルタイムに行うことができます。SNSは拡散性が高いため、店がターゲットとするSNSユーザーへマッチしたコンテンツを発信することで、知名度を急上昇させることが可能です。

SNSごとのユーザー層と自店のターゲット層をよく見比べて、より効果的なSNSを選ぶとよいでしょう。

3.テイクアウトやデリバリーサービス

コロナ禍の影響もあり、テイクアウトやデリバリーサービスを行う店舗が急増しています。
一方飲食店側は、デリバリーやEC販売、テイクアウトなど新しい提供方法の導入により、業務の複雑化、従業員の負担増加が懸念されます。

デジタルツールの効果的な利用で、サービスの選択肢を増やすことによる顧客満足の向上と、従業員の負担減少が両立するのです。

飲食店におけるDX事例

ここからは、DXに積極的に取り組んでいる企業を紹介します。以下紹介する4社は、厚生労働省からDX推進の準備が整っていると認定された「DX認定事業者」です。

株式会社すき家

株式会社すき家は全国に牛丼チェーン店を展開しています。DX戦略の方針を

「今後の販売拠点拡大に向けて更に情報収集・統合の効率化を進め、お客様の利便性向上と迅速な経営判断に資するためにDXを推進する」

としています。前述の方針遂行のため、人工知能(AI)、クラウド、IoT等の先端技術の活用を積極的に行い、業務効率化・自動化とともに新たな価値創造を目指しています。

具体的な施策として

・POSシステムの他、券売機、セルフサービスの注文システム、キャッシングレジシステムを導入し店内業務効率化を図る

・現金決済の他、クレジットカード、電子マネー等のキャッシュレス決済も導入し、顧客利便性向上と店内業務効率化を図る

・ドライブスルー、モバイルオーダー、デリバリーなどマルチチャネルへの対応を推進

などを挙げ、DX化を推進しています。

参照 すき家 https://www.sukiya.jp/about/dx/

株式会社トリドールホールディングス

トリドールホールディングスは、丸亀製麺を始めとした飲食店の店舗開発と運営を行っています。同社は「手づくり」「できたて」「人のぬくもり」にこだわり、店舗スタッフが調理と接客に専念できるよう、事務方の業務効率化を図ることをDX化の目標としています。

そのために、これまで使用していたオンプレミス(自社運用)の業務システムを、SaaS(ベンダー開発のソフトウェアをクラウド上で使用する)に切り替えました。また、経理や人事などバックオフィスの定型業務は社内で行わず、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)を活用しています。

参照 トリドールホールディングス https://www.toridoll.com/ir/management/dx.html

株式会社FOOD & LIFE COMPANIES

スシローなどの寿司チェーン店を展開しているFOOD & LIFE COMPANIESは、フードロス削減をDX施策のひとつに掲げています。

スシローは「回転すし総合管理システム」を導入し、販売動向の管理や需要予測を行っています。各皿にICタグを取り付け、どんなネタがいつ取られているのかを即時に把握。このデータをもとに高精度の需要予測をするのです。

以前は、ネタの需要予測は、各店舗の店長の経験や勘に委ねられていました。また、レーン上の商品廃棄も、人の目で見て「このネタは乾燥している」と感じた皿をレーンから間引いていました。

皿の動きがデータ化されたことで、レーンを流れる商品の管理を人の感覚に頼らず標準化することが可能になり、結果として廃棄される食品を減らすことに成功しました。同時に、需要予測によって顧客ニーズが把握しやすくなったのです。

また、廃棄される食材を減らしていこうというモチベーションも高まり、店長が具体的なアクションを起こしやすくなりました。

参照 FOOD & LIFE COMPANIES https://www.food-and-life.co.jp/sustainability/sushisystem/

株式会社すかいらーくホールディングス

すかいらーくホールディングスは、レストランビジネスの新しい価値創造に向けてDXを推進しています。

DX化の例として、コロナ禍におけるデリバリーの需要予増加に対応した、配達員専用アプリの開発があります。配達員専用アプリでは、GPSを利用した配達ルートの最適化や店舗からのサポートが可能になるなど、デリバリー業務の効率化に役立っています。これにより、デリバリースタッフの定着率向上、配達時間短縮にもつながりました。

さらに、曜日によって需要変動が大きい業態など、ひとつの店舗ではデリバリーサービスが成り立たない業態もあるため、エリア内の複数業態で配達員を共有する共同デリバリーシステムを構築しました。このシステム導入により、自社配達導入店の拡大、配達効率の向上の他、将来的には他社の配達も可能にするなど社会インフラとしての仕組みを築いていく、としています。

参照 すかいらーくホールディングス https://www.skylark.co.jp/company/i_report/2020/it.html

まとめ

現在、飲食店を取り巻く状況は大きく変化しています。多種多様となってきている顧客ニーズに応えるためにDX化は避けられないものとなっているのです。

しかし、単に業務のデジタル化でDXが完了する訳ではありません。デジタル技術を活用し、利益を最大化することがDX化の真のゴールとなります。

今回の記事で紹介した手法や、各企業の取り組み事例などを参考にして御社のDX化を進めてみてはいかがでしょうか。

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