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<ARアプリ開発>必要なツール、開発方法、ARを体験できるアプリまでまとめてご紹介

 2021年、世界のAR・VRの市場規模は494億ドル(約6兆円)でした。そして、2022年から2030年までの年間成長率は40.7%となり、2030年には4,535億ドル(約55兆円)に至ると予測されています。これは、世界のスマートフォン市場の成長予測を上回る数値で、AR・VR市場は、今後スマートフォンを超える市場規模に発展することが期待されています。AR市場への期待から、企業においてもARアプリに関心を持ち、自社で利用しようと考えるところも増えています。そんな企業の担当者向けに、ARアプリの開発に関して、その活用事例、必要なツールの案内や、AR開発方法、ARを体験できるアプリなど、まとめてご紹介したいと思います。

ARの具体的な活用方法のご紹介

 ARアプリについて、どのような活用方法があるのか知っておくと、具体的なイメージをもって企業戦略に役立てることができます。ここでは、実際にどのようにARアプリが活用されているかご紹介致します。

1 観光やイベントの開催

 ARの活用で、地域経済の活性化が期待されています。有力な観光資源のない地域では、新しい魅力発信が求められます。そのような地域ではARアプリの活用によって、観光の目玉とすることがあります。

 例えば、2022年3月、相模鉄道は「春のそうにゃんARスタンプラリー」というイベントを開催しました。ARコンテンツのスタンプラリーを実施し、紙のスタンプラリーではなく、スマートフォンでQRコードを読み込んで、画面上にキャラクターを動作させるという企画です。このように、ARを活用して新しいタイプのイベントを企画し、観光資源とする地域や企業が増えています。

2 服の試着や家具の配置

 衣服や家具は、実際に身に着けてみたり、部屋に配置してみて初めて具体的なイメージを持つことができます。また、購入前に事前にそうしたイメージを持つことができれば購買率の向上や返品率の低下につながり、買い手と売り手双方の利益になります。

 そして、衣服の試着や家具の試し置きを、ARアプリで実現することができるようになっています。特に家具や家電などは試着と異なり、簡単にはできないため、ARの活用が益々期待されています。

3 医療、建築分野での活用

 医療分野や建築分野でも、ARの活用が広がっています。

 医療現場で行われる手術にミスは許されませんが、このミスを防ぐためにARを利用するケースも増えています。具体的には、ARで患者の器官を認識し、実際に手術を行う患部の器官だけ色を変えて表示させて、手術に関係のない他器官の損傷リスクを減らします。

 建築分野でも活用されています。例えば、ARで完成イメージの映像と実際の現場を合成し、立地イメージを視覚的に確認できます。また、建設作業中に、画像解析やセンサーとARを組み合わせて、視覚情報だけでは把握できない現場環境の危険を察知し、事前に警告することができます。

4 商品やブランドのイメージを伝える

 ARを活用し、消費者に商品の活用やブランドイメージを映像として伝えることは重要なマーケティングといえます。たとえば、ドミノ・ピザでは、「ワールド10AR」という世界のチーズを巡る旅というARキャンペーンを行い、消費者に楽しいAR体験をしてもらいました。

<ARの基本>認識方法の解説

 ARに必要なツールや開発方法のご紹介の前に、ARを現実世界に出現させる条件について簡単にご紹介します。主に「画像認識型」や「空間認識型」などに分類できます。

①マーカーレス型(空間認識型)

 空間認識型とは、スマートフォンなどで撮影している現実空間にある立体物を認識して、その地形に合わせて情報を表示するARのことです。マーカーレス型とは、目印となる特別なマーカーなしに目の前の空間情報を認識して立体的な表現ができるものです。マーカー不要のため、ユーザーがどこにいてもすぐに体験できるコンテンツや、家具などのお試し置きに最適です。ただ、白い背景や単色の表面などは認識しずらい場合も多いことが難点として挙げられます。

②LiDAR型(空間認識型)

 LiDARは、センサーを使用して対象物との距離、空間上の配置場所、形状などを正確に把握できます。空間認識型のなかでも注目されている技術です。これまでは空間を把握するためには「十分な明るさ」を必要としたのですが、LiDARではそのような光も必要としません。これまでのカメラの性能では困難だった程度の詳細な空間認識が可能になります。

③GPS型ロケーションベース

 ロケーションベース型とは、特定の場所と連動したAR体験を提供するものです。主な方法としては、GPSにより提供された位置情報をもとにARを出現させます。観光名所などを出現エリアとして、ARを出現させる観光目的のコンテンツや、道案内アプリなどにも最適です。また、実店舗限定のAR体験などでもよく活用されています。

④VPS型ロケーションベース

 位置情報とカメラからの風景情報をもとに正確な位置を判定する技術で、これによって設定した位置・向きどおりのコンテンツ表示やAR体験など高度なサービスが提供できます。

⑤マーカー型(画像認識型)

 画像認識型とは、動き出すトリガーとなる画像などをマーカーとして設定し、そのマーカーに向けてカメラをかざして画像認識させて、プログラムされた情報を表示させるARのことです。3Dアニメーションの表示だけでなく、静止画が動画になったり、静止画を認識して音声を流したりすることも可能です。静止画の場合、基本的には何でもARを出現させるマーカーとして設定できます。もっとも、画像の特徴が不十分だとトリガーとならずに体験が起動しなかったり、あるいはARの出現までに時間がかかる場合もあります。

AR開発のための開発環境と使用言語について

 ARの開発環境は、使用言語に合わせて利用する開発環境を選びます。ここでは、AR開発に必要な開発環境をいくつかご紹介し、使用言語についてまとめます。もっとも、開発するARによって使用する開発環境も異なってきます。そのため、AR開発においては、まずはその目的や、ターゲットとなるデバイスを明確にしましょう。

①Unity

 Unity社により提供されるゲーム開発のための開発環境です。OSの種類に制限はなく、使用言語もC#や、JavaScript、Booなどで開発できます。さらに、一定規模以下の小規模の企業は、無料で利用可能である点も魅力です。

②Unreal Engine

 こちらも、Epic Games社より開発された、Unityと同じくゲーム開発向けの開発環境です。Unreal Engine を使用した AR アプリの構築ための「Unreal Engine AR フレームワーク」が提供され、 AndroidとiOS の両方に対応しています。

③Android Studio

 Googleが提供する開発環境であるため、Androidアプリの開発には利便性が高いです。さらに、WindowsだけでなくMacでも使用できます。

④Xcode

 Apple社が提供する開発環境ですので、iPhone、iPad、Mac向けのアプリ開発に向いています。Mac所持者であれば無料でダウンロードできます。ただし、Xcodeの対応機種はMacのみです。

⑤AR開発の使用言語

 ARの開発に使用される言語は、Unityの場合はC#、Android向けの場合KotlinやJava、iOS向けにはSwiftが挙げられます。WebでARを実装するWeb ARの場合は主に、HTML+JavaScriptとなります。

AR開発のライブラリのまとめ

 ARアプリの開発には、開発で使うプログラムを一つにまとめた<ライブラリ>が必要です。

 ライブラリも、開発環境と同じく、ARスマホアプリを開発するのか、ARグラスのアプリケーションを開発するのか、Web ARを開発するのかなど、開発するARの用途によって選択する必要があります。また、ライブラリもそれぞれ機能が異なるため、開発予定のARのイメージを具体的に持って選ぶ必要があります。特にこだわりがない場合には、はじめはプラットフォームの公式ライブラリを利用しても良いかもしれません。

 以下に、ライブラリについてその特徴も踏まえてご紹介致します。

①Amazon Sumerian

 AWSが提供するARコンテンツを作成のライブラリです。ブラウザだけが必要で、ソフトウェアやプログラミングなどの専門知識も不要という手軽さが魅力です。AndroidとiOSに双方に対応しています。Webページに埋め込んで、仮想ルームなどの3Dシーンの作成ができます。

②Vuforia

 画像認識型のマーカー型、マーカーレス型の双方に対応しているライブラリで、サンプルの種類が多様で作成が簡単にできる点が魅力です。色々なOSに対応して、自動で変換されるゆえに、OSごとに開発する手間もいりません。また、カスタマイズも自由にできます。

③ARCore

 Googleが提供するARプラットフォームで、AndroidだけでなくiOSにも対応しています。モーショントラッキング機能というもので、床、壁やテーブルなどがある空間でも正確に把握できます。光の量も測定できるため、照明の明るさによって表現を異なるものにできます。

④ARKit

 Apple社が提供するiOS端末(iPhoneやiPadなど)を対象としたARライブラリです。人の動きを自動で感知してキャプチャできる機能や、人の前や背後をARコンテンツが通り過ぎる表現ができる機能など、リアリティのあるARを実現できることが魅力です。

⑤Snapchat Lens Studio

 写真SNSのSnapchatを提供するSnap社が開発したAR専用のソフトウェアです。スマートフォンだけでなく、パソコンにも対応しています。Snapchat上で利用でき、自分の顔を変形させたり、画像を装飾する機能を楽しむことができ、アプリ内のARフィルター作成に活用できます。

⑥Magic Leap Toolkit

 ヘッドマウント型のデバイス「Magic Leap」専用のARライブラリです。Magic Leap向けのコンテンツを開発する際に必要となる機能が最適化されています。Magic Leap向けコンテンツの開発には、C系言語やHTML+JavaScriptにも対応しているものの、提供されているライブラリはUnityだけであるため、Unityに取り込んで使用する必要があります。

⑦Spark AR

 Facebookによってオープンソースが公開されているAR開発用のアプリケーションで、FacebookやInstagram、Messengerで使用するAR開発を念頭に置いたものです。直感的な操作が可能で、高度なコーディングの知識や技術はいりません。機能も多彩で、とりわけ顔認識に優れており、顔の動きを再現するオブジェクトの作成にも向いています。

⑧Mixed Reality Toolkit

 Microsoftが提供するヘッドマウント型のAR/MRデバイス「HoloLens」のための開発フレームワークです。HoloLens向けのフレームワークにはUnity版がだけが公開されており、HoloLens向けのコンテンツはUnreal又はUnityで行なうのですが、開発言語としてはUnityが必須です。

⑨AR.js

 スマホアプリやARグラス開発のためのライブラリとは違って、Web ARを開発することができるjavascriptのライブラリです。AR.jsは、マーカーにカメラを向けると、専用アプリ不要でWebブラウザ上でオブジェクトを表示したり動作させることができます。また、360度動画再生やobjファイル表示も可能で、アニメーション制作も可能です。加えて、誰でも無料で使用できる点が魅力です。なお、Web ARの開発でよく用いられるライブラリは、他にもA-Frameなどがあります。

ARアプリの開発の流れ

 ここまで開発環境や言語、ライブラリなどをご紹介しましたが、ここからは開発手順のご紹介をします。

1 AR開発の目的を明確化し、開発環境とライブラリを準備

 まずはAR開発の目的を明確にしましょう。そのうえでその目的に沿って最適な、開発環境、使用言語、ライブラリの組み合わせを選択します。開発環境やライブラリは、既存のOSに合うものを選びましょう。iOSやAndroidなどの端末に対応できるものを開発するときは、対象端末の広い開発環境やライブラリを考えます。MacなどのiOS向けのARアプリを開発するなら、Apple社のものが最適でしょう。

2 AR体験のデザイン や企画に沿ったプログラミングを行う

 次に、AR体験の詳細設計を行います。そして、体験デザインに沿ってプログラミングを行います。自社で開発をしたい場合、コーディングやプログラミングなしに開発できるARもあるため、自社の能力に合ったARを企画しましょう。一方、高度なARを提供したい場合には、コーディングやプログラミングが必要になってきます。

3 公開する

 アプリが開発できたら、テスト公開を実施します。バグが、対象とするすべての端末に起こっていないかを確認します。動作に問題がなければ、正式にアプリ公開をします。スマホアプリであればAppStoreなどに公開申請をします。これは、MRグラスであっても同様です。

AR体験できるアプリのまとめ

 ここまで、ARアプリの詳細ついて述べてきました。ここでは、AR体験をすぐにできるアプリをご紹介致します。実際にAR開発をする前に、実体験してみて、開発するARのイメージを持ちましょう。

 Adobeが2019年に発表したAR体験制作ツールです。PC版では、Photoshopやillustratorとも互換性があるため、さまざまなアニメーションを自分で作ることができます。また、アプリでは、実際に体験することを重視し、すでに用意された3Dモデルを現実世界に配置することも簡単にできます。さらに、配置だけではなく、自分で自由に動きをつけることができるため、AR制作を体験するための最適なツールといえます。

 気象レーダーARアプリで、リアルタイムで降雨情報を確認できるものです。リアルタイムで降雨情報を知る手段は他にもありますが、注目すべきポイントは3D・ARの機能です。カメラを起動して雨の方角を見ると、カメラの画面上で雨が降ってきて、これにより雨がどの方角からどれ位降ってくるか把握でき、正確に降雨量の予想もできます。これで、夏のゲリラ豪雨対策もばっちりになります。

 日経ARをインストールして、紙面にある「日経AR」マーカーにかざすとARで映像や音楽などのコンテンツが表示されます。これによって、新聞のテキストだけで伝えきれない情報も複合的に表示されるようになります。日経新聞を購読している方には、手軽なAR体験ができるのでおすすめです。

 ARゲームに火を付けたスマホゲームで、実際の世界にポケモンが現れているかのように感じることができ、楽しいARゲームになっています。まだチャレンジしたことのない方はぜひダウンロードし、楽しみながらAR体験をしてみましょう。

 購入を検討している家具を選んでカメラでかざすだけで、現実世界に家具を配置することができる画期的なアプリです。このIKEA Placeがあれば簡単に家具のサイズ感を把握することができます。これまで部屋のサイズを測定し、それを家具の大きさと照らし合わせて、家具の配置をイメージしてきましたが、その必要もなくなりました。IKEAで買い物をするついでに、「IKEA Place」を利用してみても良いかもしれません。

 アップルが発表した現物を採寸するアプリです。iPhoneのカメラで捉えた物体をタップするだけで、物体の長さや奥行き、距離などを測ることができます。家具の長さや、DIYをする時に部品の長さや大きさを測るときに、簡単に利用できる非常に便利なアプリです。

 ネットでスニーカーを購入するとき、サイズ感・色合いがわからなくて購入に二の足を踏むことがありませんか。しかし、この「Wanna Kicks」を利用すればARによってサイズ感や色合いを簡単に把握できるため、ネットでスニーカーを買うことのハードルがぐっと下がります。ざまなブランドのスニーカーも履くことができて、比較もできてとても便利です。

最後に AR開発の注意点

 最後に、ARアプリの開発における注意点をまとめてみます。

1 選定する技術の選択肢を広げる

 AR開発で主流はアプリの開発です。しかし、ARを導入する方法としてはアプリ以外にも選択肢があります。選定にあたり大切なのは、ARを導入したい目的や予算に応じて最適なものを選ぶことです。AR導入には、以下主に3つの方法があります。

 1つ目が、InstagramなどのSNSのARカメラです。メリットは、多くの人のスマホにすでにインストールされている手軽さです。また、比較的コストも安くARコンテンツの制作ができます。反対に、デメリットとしてはプラットフォーマーのMeta社の規約に沿って開発をする必要があり自由度が下がる点です。また、Instagramアプリをインストールしているユーザーしか対象にできないことです。

 2つ目は、WebARです。専用アプリが不要で、プラットフォーマーによる規約がなく自由度が高い点が魅力です。特に店舗ARにとって、当該店舗限定の体験を作ることもできます。GPSやCookie等を活用した多彩なARアプリケーションを提供することができます。リアルビジネスでARをうまく活用したい場合、WebARが最適といえます。

 3つ目は、ネイティブアプリです。これは、App Storeなどのアプリケーションストアを介して端末へインストールするタイプのアプリで、ARのメジャーな開発手法です。iOSとAndroid OSの各環境に合わせた専用アプリの開発を要します。強みは、高度なAR体験の開発に適していることです。開発コストが高くなる傾向ですが、自社専用の作りこんだARアプリを開発する場合には最適の技術といえます。

 他の手法としては、ARグラスを活用する手法もあります。

2 外部の開発パートナー選びは慎重に

 自社内でARアプリをすることも可能ですが、専門性を要しますし、人材などの資源も必要です。そこで外部に委託することも有力な選択肢になります。しかし、外注する際は、行き違いにより想定と異なるアプリとなることを防ぐために、自社が目指すものを明確にし、具体的に依頼内容を伝えることが必要です。また、外注先によって得意分野や、費用は異なるため、自社の目的や、予算に見合うパートナーを選びましょう。

3 ノーコードでWebARを制作することも可能

 ユーザーに専用アプリのインストールをさせる必要のない「WebAR」が近年人気を集めています。さらに進んで、最近では写真や画像をアップロードするだけで、ノーコードで簡単に場所限定のWebARコンテンツを制作できるツールも登場してきました。 例えば、「LocationAR」というツールは、プログラミングの知識や外部への委託なしに、ARコンテンツの制作、GPSによる位置情報の把握、ARを使ったスタンプラリーの制作に至るまで、簡単に行うことができます。

 利便性の高さから、様々な業界でWebARの導入が進んでおり、このようにプログラミングなしにWebARコンテンツを制作できるツールを検討してみるのも良いでしょう。

4 テストを入念に行い不測の事態を回避する

 ARアプリは、ユーザーの現実空間に依存した技術です。そのため、いざアプリを公開したものの、不具合が起きる可能性も高いです。それゆえ、入念なテストが不可欠です。ロケーションベースのARでは、実際の場所での入念なテストが必要ですし、ロケーションを限定しなくてもユーザーの利用が想定される端末でのテストを厳密に行う必要があります。

5 法律を遵守すること

 ARは、位置情報やユーザーの顔認識など、個人情報に関する情報を多く入手します。しかし、これは裏を返せば、入手した個人情報に対して、サイバー攻撃などのセキュリティリスクが生じることになります。そのため、セキュリティ対策が必要ですし、個人情報の取り扱いも法律に従う必要があります。また、万が一トラブルが起きたときのために、責任の所在を明確にしておくことで不測の損害を防ぐことができます。

まとめ

 ここまでARアプリ開発について、開発環境、使用言語、ライブラリなどをご紹介し、AR体験できるアプリのご案内、ARアプリの開発手順、開発の注意点など、ARアプリに関して網羅的にご紹介致しました。少しでもAR開発を考える際の助けになれば幸いです。

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